今や誰もが知っているコミュニティーサイト・craigslist.com は、洒落っ気がまったくなく、広告もいっさい掲載されていない、シンプルきわまりないサイトだが、いまでは世界中にローカルサイトを持ち、どこからでもアクセスできる。一度大手から買収を持ちかけられたが「営利目的ではないから」という理由で管理責任者はこのいい話を断った。
ここのニューヨークのサイトに、引っ越しで不必要になったものを売りに出した。ここに掲示すると、たいがいのものは24時間以内に買い手がつく。今回出したのは、大小2つのタンス、フルサイズのベッドフレームとフォームマットレス、6メガのデジタルカメラ。いろんな人がいろんな事情で私の持ち物を必要とし、たくさんの問い合わせのメールが来たので、メールが届いた順に返信した。
小さいタンスは、引っ越ししたばかりの彼女がページに乗せた私のタンスの写真を見てほしがっていたので、彼女を驚かせたいという、アイリッシュ系の優しいボーイフレンドが買い手だった。
大きいタンスは中国系のゲイカップルが、さらに値切って買って行った。
ベッドフレームとマットレスは、イタリア系のカップルがブルックリンから取りにきた。翌日ビレッジに引っ越すのだが、ブルックリンに比べるとベッドルームが小さくなるので、クィーンサイズのベッドをあきらめて、フルサイズにしようと決めたところ、私のベッドの写真が目についたらしい。「私たち、そんなに大柄じゃないから、フルで充分だし、あなたは日本人だから、変なものは売らないと思ったから」と彼女。私にこのベッドを売りに出した理由も聞いてきた。「まだ新しくてどこも壊れていないし、シミもないけど、引っ越すにあたってこのベッドが必要じゃなくなった」というと満足そうにしていた。
6メガのデジカメは、学校で出す新聞の編集委員をしている娘がほしがっているからと、その父親が買い手だった。売り手の返信メールの名前で、私が日本人だとわかると、その15歳くらいの娘は私から買うことに決めたのだと、このインド系の親子はカメラを取りにきた時そう言った。「日本人だから信頼できると思った」と言う。
これは買い手になったときにも聞かれた。ヨーロッパで購入したというデジタル一眼レフを買いたいとメールした時、他の人を保留にして最初に私に見せると、売り手のフォトグラファーは言ってくれた。
「日本人は信頼できる」というのはステレオタイプかもしれないが、そういうイメージをこれまでに作ってこられた、 外国に住む日本人の皆さんのおかげで、 私も信頼を得ることができたのだと思う。自分自身のアイデンティティがあやふやになってきたと思っていたら、日本人について、外から教えられた気がする。