昨晩11時頃、知り合いの男性が、知らない男2人にイーストビレッジの路上で叩きのめされた。最初は抵抗したが、一人がピストルを持っていたため、されるままになり、購入したばかりのiMacも奪われた。目撃者の通報があり救急車で病院に運ばれ、手当は受けたらしいが、出社はしばらくできない様子。負った傷もiMacを盗られた悔しさもいずれは癒えるかもしれないが、この事件がトラウマにならないとも限らない。それに彼の場合、保険に加入していなかったので、それが大きな痛手になるだろう。ちなみに救急車で病院まで搬送された場合、出動料として約100ドル請求される。治療費以外に緊急医療施設の使用にもお金がかかる。自分で任意で保険に加入していない場合、すべての医療費は自分の懐から出さなければいけないのだ。アメリカでも州単位で健康保険を出しているところがあるが、いわゆる日本で言う「国民健康保険」が、アメリカには存在しない。
実はクレジットカードの負債を抱えているアメリカ人は、買い物やギャンブルにお金をつぎ込んだ人ばかりではない。中には、医療保険に加入していなかったために医療費をカードで支払った人も多い。企業に所属していれば、勤続年数によって企業が負担率を上げてくれるので、医療保険の月額はわずかだが、自分で医療保険に加入するとなると、一人あたり月額は500ドル以上になる。ファミリーで加入するとその3倍に跳ね上がる。これは時給労働をしている人、不定期のフリーランスの人、低賃金の人、また定年退職した人にとっては、かなりの高額だ。クレジットカードの利息が高いことも承知で医療費を支払わざるをえないのは、もし支払えないと、治療そのものが受けられないからだ。それが命に関わる緊急手術だったり、長期にわたる治療だったりしたら、どんな人間だってお金は二の次と考えるだろう。でもその後のカード返済にも、ずっと苦しめられることになる。アメリカは (戦争に若者を次々と送り込むのもそうだが)、健康で仕事をし、税金を納めているうちはいいが、保険に入る余裕もなく、病気になった人を国が金銭的に救済しないという非人道的な一面を持つ。
政治討論の番組で国民健康保険を持つ国の例として、ヨーロッパ諸国や日本の事情がよくテレビで論議されるが、そのたびにアメリカの友人は、私に国民健康保険の利点を聞いてくる。アメリカで保険に入っていない人が病院へ行くと、初診料は100ドル以上かかる。それに比べ、日本で保険証をもって病院へ行く時、まず「いくらかかるか」を考え、病院へ行くことをためらう必要はない。これは病気の初期段階においてはとても重要だと思う。症状が重くなってからでは、治療費も高くつくからだ。
アメリカは今、来年の大統領選に向け、ヒラリークリントンをはじめ民主党員はNational Health Insuranceの実現を公約している。この「国民健康保険」の実現に向けては、クリントン大統領時代に動きがあったが、時間切れとなった形で実現しなかった。ブッシュ政権下においては、国民健康保険など、大統領の頭のかたすみにもないだろう。ヒラリークリントンは「就任した暁には、今度こそ実現させる」と約束している。その日が待ち遠しい。