今、アメリカで放映されているフジサンケイの番組枠の中で、日本の大手企業のテレビコマーシャルがいくつも流れるが、中でもKDDIのCFを見ているととても疲労感を覚える。それはKDDIの男性社員が真っ暗なオフィスでひとり企画を練って、一生懸命に仕事をしている(つもりの)15秒もの。隠されたメッセージは、あえて言うなら「お客様のために、うちの社員はこんなに遅くまで仕事しています」といったところだろう。そんなシーンを見せられて「KDDIはすばらしい企業だ」と誰が思うのだろうか?
昨日転載したニューヨークタイムスの記事にも乗っているが、日本では「夜遅くまで仕事する」のが、一生懸命仕事をしているという証。残業代のために残って仕事するという話も聞くが、私生活を犠牲にしてまで、企業に対する忠誠心を見せなければいけない理由はどこにあるんだろう? それほど長い時間仕事していると、集中力は落ち、ミスが増えるので能率が悪い。おまけにその後「つきあい」というのがあって、会社の同僚と飲みに行き、会社のグチをぶちまけ合う。先日も友人と日本食レストランへ行ったら、隣にいた日本人客のグループが、酔って上司の悪口に花を咲かせていた。その人たちは忠誠心どころか、会社のことをとことん嫌っている感じだった。そんなところでグチってないで、仕事を終えたらさっさと帰宅すればいいのに、と私は思う。そもそも毎日がそんなだと、不健康きわまりない。「ちょっと風邪をひいたくらいで会社を休むな」というのも日本ではよく聞かれる。とんでもない。他の社員に移される方が、会社としてはもっと迷惑なはずだ。でも日本人なら、病気の身体にムチ打って出社し、能率の悪い仕事をするんだろうな。でも、何のために?
私は毎日24時間の使い方を振り分ける。8時間は確実にオフィスにいるのだし、睡眠は最低7時間とり、出勤前の準備に約2時間、通勤には余裕をみて往復1時間とっておく。これでもう18時間だ。明日でもかまわない仕事は明日にまわし、残業しなくてはならないときでも、12時間以上はオフィスにいないよう心がけている。私の中では、これが効率よく気持ちよく仕事ができる条件だ。残された時間は、少しでも自分のために使いたい。それは大切な人と時間を過ごしたり、猫と遊んだり、本を読んだり、テレビを見たり、書きためておいたものをまとめたり、時には友達と出かけたり、議論したり、街をブラブラ散歩したり、映画を観たり、写真を撮ったり。料理でもケーキづくりでも、部屋のかたづけでもいいし、何もしなくてもいい。仕事だけのために1日を費やすと生活のバランスがとれないし、これを1週間単位にすると、週末だけではとても時間が足りないからだ。
「KARO-SHI」は、アメリカでも言わずと知れた言葉になったが、死んでから訴えても遅い。日本の企業文化における残業は、たちの悪い仲間意識であり、チームワークでも企業への忠誠心でもない。日本の皆さん、会社の犠牲になって過労死する前に、もっとご自愛ください。そして、好きで遅くまで仕事している人は、能率よく仕事をこなして定時で帰宅しようとしている人を気持ちよく送り出し「自分がこんなに仕事しているのに」などとは、くれぐれも考えないようにしてください。